サウナ非常ボタンの義務は自治体で違う|許可区分×条例まとめ

サウナ室の非常ボタン(法令上の表記は「非常用ブザー」)が義務なのかを調べると、 答えが人によって食い違います。
食い違うのは、義務の有無が次の2つで変わるからです。
- その施設が公衆浴場業の許可か、旅館業の許可か
- 施設がどの自治体にあるか
国の法律には、サウナ室への非常用ブザーの設置を義務づける規定がありません (詳しくはサウナの非常ボタンは義務?許可区分と条例で変わる設置基準)。 義務が生じるのは、公衆浴場法第3条第2項の委任を受けた自治体の条例からです。
この記事の調査範囲と判定基準
調査範囲
項目 | 内容 |
|---|---|
対象 | 47都道府県の条例(+規則・細則) |
確認した条例の種類 | 公衆浴場法施行条例(およびそれに相当する名称の条例)/同施行規則・細則/旅館業法施行条例 |
最終確認日 | 2026年9月1日 |
確認方法 | 各自治体の例規集・公式PDFから条例本文を取得し、全文をキーワード検索(非常/非常用ブザー/非常ベル/非常警報/通報装置/呼出装置/サウナ/蒸気浴室/熱気浴室 ほか) |
判定基準
判定 | 定義 |
|---|---|
○ 明記あり | 条例(規則・細則を含む)本文に、サウナ室(蒸気浴室・熱気浴室を含む)内の非常通報手段の設置が規定されている |
△ 間接 | 「室内を見通せる窓」「入浴者の安全に注意すること」等、非常通報装置を名指ししないが関連する規定がある |
× 規定なし | 条例本文を確認したうえで、該当する規定が無いことを確認した |
? 未確認 | 条例本文にアクセスできなかった(今回は0件) |
未調査を「規定なし」とは書いていません。 × はすべて、条例全文を取得して読んだうえでの判定です。 本文に到達できなかったものは ? として残す方針で調査しましたが、結果として ? は0件でした。
この一覧が扱っていない範囲
- 政令指定都市や中核市など保健所を設置する市には、県の条例ではなく市の独自条例が適用されます。 この表は都道府県条例が対象です。市の条例は下の政令指定都市の節にまとめています。
- 火災予防条例は含みません。火災予防条例は消防法第9条に基づく市町村の条例で、 都道府県には(東京都を除き)存在しません。目的も防火であり、非常通報とは別のものです(後述)。
- 条例は改正されます。最終判断は必ず所管の保健所にご確認ください。
47都道府県の判定内訳
判定 | 件数 | 割合 |
|---|---|---|
○ 明記あり | 22 | 47% |
△ 間接 | 11 | 23% |
× 規定なし | 14 | 30% |
? 未確認 | 0 | — |
明記があるのは半数以下です。 「サウナの非常ボタンは法律で義務」という説明は、正確ではありません。
47都道府県 一覧
都道府県 | 判定 | 条例・規則名 | 条番号 | 該当条文 |
|---|---|---|---|---|
北海道 | ○ | 公衆浴場法施行条例 | 第8条第11号 | サウナ室には非常警報装置を備えること |
青森県 | ○ | 公衆浴場法施行条例 | 第3条第1項第6号ニ | 室内の入浴者が見やすい位置に非常用ブザー等を設けること |
岩手県 | △ | 公衆浴場法施行条例 | 第3条第7号/第4条第1項第1号 | 見通しができる材料/安全装置・適温保持 |
宮城県 | ○ | 公衆浴場法施行条例 | 第6条第10号キ | 窓を設け、かつ非常用ブザー等を見やすい位置に設けること |
秋田県 | × | 公衆浴場法施行条例 | 第3条第7号 | 温度計及び温度調節器のみ |
山形県 | △ | 公衆浴場法施行条例 | 第2条第2項第1号ほか | 見通せる窓/施錠しないこと |
福島県 | × | 公衆浴場法施行条例 | — | サウナに関する規定自体が無い |
茨城県 | △ | 公衆浴場法施行条例 | 第4条第20号ア(ク) | 見通せる窓のみ |
栃木県 | × | 公衆浴場法施行条例 | 第7条第24号 | 温度計・適温保持のみ |
群馬県 | ○ | 公衆浴場法施行条例 | 第3条第1号ワ(3) | 温度計、時計及び非常用ブザーを備えること |
埼玉県 | ○▲ | 公衆浴場法施行条例 | 別表第一 第一号ム(5) | 必要に応じて非常用ブザー等を設けること |
千葉県 | ○ | 公衆浴場法施行条例 | 第4条第1項第17号ホ | 窓を設け、かつ室内に非常用ブザー等を備えること |
東京都 | × | 公衆浴場の設置場所の配置及び衛生措置等の基準に関する条例 | — | サウナ関連は温度計のみ |
神奈川県 | × | 公衆浴場の設置場所の配置及び衛生措置等の基準等に関する条例 | — | 別表第3に非常通報の規定なし(※県配布資料では指導事項。後述) |
新潟県 | ○▲ | 公衆浴場の設置場所の配置及び衛生措置の基準等に関する条例 | 第4条第1項第39号ウ | 必要に応じて非常用ブザー等を利用しやすい場所に |
富山県 | ○ | 公衆浴場法施行規則 | 第2条第1項第17号エ | 非常用ブザーその他の通報装置を設けること |
石川県 | ○ | 公衆浴場基準条例 | 第4条第4号レ(8) | 見やすい場所に非常用ブザーその他の通報装置を備えること |
福井県 | ○ | 公衆浴場基準条例 | 第4条第3号ク | 見やすい場所に非常用ブザーその他の通報装置を設けること |
山梨県 | × | 公衆浴場法施行条例 | — | サウナ室固有の構造設備基準が無い |
長野県 | × | 公衆浴場の設置場所の配置及び衛生等の措置の基準に関する条例 | 別表第3 | 温度計のみ |
岐阜県 | ○ | 公衆浴場法施行細則 | 第6条第12号リ | サウナ室には非常用ブザー及び時計を備えること |
静岡県 | ○※ | 旅館業法施行条例 | 第6条第4号 | ブザーその他の非常用設備を設けること(※公衆浴場法系には規定なし) |
愛知県 | ○ | 公衆浴場の設置場所の配置及び衛生措置等の基準に関する条例 | 第4条第26号ト | 温度計、時計及び非常用ブザーを備えること |
三重県 | ○ | 公衆浴場法施行条例 | 第4条第1項第4号タ(8) | 温度計及び非常用ブザーその他の通報装置を備えること |
滋賀県 | ○ | 公衆浴場法施行条例 | 第3条第1項第8号キ | 窓を設け、かつ非常用ブザー等を利用しやすい位置に |
京都府 | ○ | 公衆浴場法施行細則 | 別表第1(第7条関係) | 室内には非常用ブザー等を見やすい場所に設けること |
大阪府 | × | 公衆浴場法施行条例 | — | サウナに関する規定自体が無い |
兵庫県 | △ | 公衆浴場規則 | 別表 第2の1(4) | 外部から熱気室内を見通せること |
奈良県 | × | 公衆浴場法施行条例 | — | 蒸室の構造規定のみ |
和歌山県 | ○ | 公衆浴場衛生基準等に関する条例 | 第5条第1項第6号 | 利用しやすい場所に非常用のブザーを設けること |
鳥取県 | × | 公衆浴場法施行条例 | 第4条第1項第1号・第2号 | 放熱設備・温度調整のみ |
島根県 | △ | 公衆浴場法施行条例 | 別表1 第13号/別表2 第2号 | 内部から開閉できる構造/浴場内を監視 |
岡山県 | ○ | 公衆浴場法施行条例 | 第4条第1号ナ(3) | 温湿度計及び非常用ブザーを設けること |
広島県 | △ | 公衆浴場法施行条例 | 第4条第2号ヘ(7) | 個室のみ非常用のベル(共同サウナ室には義務なし) |
山口県 | ○ | 公衆浴場の設置場所の配置及び衛生等に必要な措置の基準に関する条例 | 第4条第10号ハ | 室内が見える窓及び非常用ブザーを設けること |
徳島県 | ○ | 公衆浴場法施行条例 | 第6条第1項第3号ウ・第4号 | 温度計、時計及び非常用ブザー等が設けられていること |
香川県 | △ | 公衆浴場に対する措置の基準等に関する条例 | 第3条第23号ア | 見通せる窓のみ |
愛媛県 | ○ | 公衆浴場設置等の基準等に関する条例 | 第4条第9号ケ | 非常用ブザー等が見やすい位置に設けられていること |
高知県 | △ | 公衆浴場法施行条例 | 第7条第11号エ | 見通せる窓のみ |
福岡県 | × | 公衆浴場法施行条例 | — | サウナ・熱気浴室・蒸気浴室の規定自体が無い |
佐賀県 | × | 公衆浴場に関する条例 | 第3条第1項第1号サ・シ | 放熱パイプ・内部から開閉のみ |
長崎県 | △ | 公衆浴場法施行条例 | 第6条第1号イ | 適温保持・「利用者の安全確保の措置」 |
熊本県 | ○ | 公衆浴場基準条例 | 第4条第1項第11号エ | 温湿度計及び非常用ブザーを設けること |
大分県 | △ | 公衆浴場法施行条例 | 第4条第7号ロ・ハ | 見通せる窓/内部から開閉できる構造 |
宮崎県 | × | 公衆浴場法施行条例 | 別表第1第1号(20) | 温度調節設備及び温度計のみ |
鹿児島県 | △ | 公衆浴場法施行条例 | 第5条第2項第4号 | 使用中は常に入浴者の安全に注意すること |
沖縄県 | × | 公衆浴場法施行条例+施行細則 | 細則 別表 | 温度計のみ |
▲=「必要に応じて」の留保付き / ※=旅館業法系のみ
出典URL は記事末尾に一括して掲載しています(自治体ごとの例規集ページ)。
政令指定都市の条例
保健所を設置する市には、県ではなく市の条例が適用されます。 施設が政令指定都市や中核市にある場合は、上の表ではなくこちらをご確認ください。
政令指定都市20市についても、条例(および規則や要綱)の本文を確認しました。
判定 | 件数 |
|---|---|
○ 明記あり | 13 |
△ 間接 | 3 |
× 規定なし | 4 |
? 未確認 | 0 |
# | 市 | 判定 | 階層 | 条番号 | 該当条文 |
|---|---|---|---|---|---|
1 | 札幌市 | ○ | 条例 | 第5条第4号イ | サウナ室には、非常警報装置を備えること |
2 | 仙台市 | ○ | 条例 | 第4条第1項第7号ト | 窓を設け、かつ非常用ブザー等を見やすい位置に設けること |
3 | さいたま市 | ○▲ | 条例 | 別表第1第29項第5号 | 必要に応じて非常用ブザー等を見やすい位置に |
4 | 千葉市 | ○ | 条例 | 第4条第1項第19号オ | 窓を設け、かつ室内に非常用ブザー等を備えること |
5 | 横浜市 | △ | 条例 | 別表第3第1項第2号 | 内部の状態を見通せる設備のみ |
6 | 川崎市 | ○ | 条例 | 別表第1第2項第19号キ | 室内には非常用ブザー等を見やすい場所に(令和7年7月1日施行の改正で新設) |
7 | 相模原市 | × | — | — | 全例規で「サウナ」0件 |
8 | 新潟市 | ○▲ | 条例 | 第4条第1項第4号ウ | 必要に応じて非常用ブザー等を利用しやすい場所に |
9 | 静岡市 | ○ | 条例 | 第4条第6号 | ブザーその他の非常用設備を設けること |
10 | 浜松市 | ○ | 条例 | 第3条第17号エ | 室内の見やすい場所にブザーその他の非常用設備を |
11 | 名古屋市 | ○ | 条例 | 第4条第1項第13号エ | 室内には、非常用ブザー等を備えること |
12 | 京都市 | ○ | 規則 | 細則 第7条第1項第6号オ | 非常用警報器その他の入浴者の安全を確保するための装置 |
13 | 大阪市 | ○ | 要綱 | 公衆浴場指導要綱 第4-2(9) | 室内には非常用ブザー等を見やすい場所に(条例本体には規定なし) |
14 | 堺市 | × | — | — | サウナ室という類型自体が条文に無い |
15 | 神戸市 | △ | 条例 | 第4条第2項第1号エ | 外部から熱気室内を見通せること |
16 | 岡山市 | ○ | 条例 | 第4条第1号キ(ウ) | 温湿度計及び非常用ブザーを設けること |
17 | 広島市 | △ | 条例 | 第4条第1号ソ(ア) | 外部から温度を確認・調整できる装置のみ |
18 | 北九州市 | × | 条例 | 第5条第2項第8号 | 温度計のみ |
19 | 福岡市 | × | 条例 | 第6条第2項第2号 | 温度計のみ |
20 | 熊本市 | ○ | 条例 | 第4条第1項第17号エ | 温度計及び非常用ブザーを設けること |
▲=「必要に応じて」の留保付き
千葉市の規定と緩和の裁量
千葉市公衆浴場法施行条例 第4条第1項第19号オ サウナ室の室内を容易に見通すことのできる窓を適当な位置に設け、 かつ、サウナ室の室内に非常用ブザー等を備えること。
千葉市の条例には、市長が基準を緩和できる裁量規定(第5条第2項)があります。 ただし、この「オ」だけが緩和の対象から外されています。 調査した20市のなかでは、いちばん強い書きぶりでした。
規定が置かれている階層
条例を検索しただけでは見つからない市があります。
- 京都市:条例ではなく規則(施行細則)
- 大阪市:条例にも規則にも無く、公衆浴場指導要綱
大阪市は、大阪府の条例にも市の条例にも規定がありません。 それでも指導要綱で「非常用ブザー等を入浴者の見やすい場所に設けられていること」を求めています。 条例だけを検索して「大阪は不要」と判断すると、実務と食い違います。
県と市で基準が違う例
静岡県の公衆浴場法施行条例には非常用ブザーの規定がありませんが、 静岡市の条例には「ブザーその他の非常用設備を設けること」があります(市のほうが厳しい)。 所在地がどちらの管轄かで結論が変わります。
東京都と特別区(23区)
東京都については、よく見かける説明に3点の誤りがあります。
- 「東京都公衆浴場法施行条例」という名称の条例は存在しません。 該当するのは「公衆浴場の設置場所の配置及び衛生措置等の基準に関する条例」(昭和39年都条例第184号)です
- 特別区(23区)には都の条例ではなく、各区が独自の「○○区公衆浴場法施行条例」を持っています。 都全体で同名の条例が25件確認できました。23区内の施設は、当該区の条例を確認する必要があります
- そのうえで、東京都全域(都+特別区+市町村)の例規を横断検索した結果、 浴場関係条例における「非常用ブザー」は0件でした。「非常ボタン」「呼出装置」も0件です
つまり、東京都の条例にも特別区の条例にも、サウナ室の非常通報装置の設置義務はありません。
東京都火災予防条例の第7条の2「サウナ設備」も、求めているのは 「温度が異常に上昇した場合に直ちにその熱源を遮断することができる手動及び自動の装置」+標識の掲示であり、 通報手段の規定ではありません。
2025年12月の事故が起きた自治体
2025年12月15日に死亡事故が発生した個室サウナは、東京都港区にありました。 非常用ブザーの設置義務が条例上いっさい無い自治体です。
港区は事故後、「条例改正も含め必要な対策を進めてまいります」と公表しています。 23区の条例は今後動く可能性があります。
直近で条例が動いた自治体
条例は固定されたものではありません。直近では、次の改正が確認できます。
- 川崎市:令和7年7月1日施行の改正で、サウナ室の非常用ブザーの規定が新設されました
- 千葉市:令和5年12月19日施行の改正で、サウナ室の規定を一部緩和(テントサウナやサウナカーへの対応)
- 港区:条例改正を含む対策を検討中と公表
この記事の最終確認日(2026年9月1日)より後の改正は反映されていません。
「○」の書きぶりの3段階
条例に規定があっても、書きぶりによって拘束力が変わります。
(1) 無条件の義務
群馬県:サウナ室には、温度計、時計及び非常用ブザーを備えること。 愛知県:蒸気室等の室内には、温度計、時計及び非常用ブザーを備えること。 岡山県:サウナ室又はサウナ設備には、温度調節設備を備えるとともに、室内には温湿度計及び非常用ブザーを設けること。
該当:千葉県、群馬県、愛知県、滋賀県、岡山県、熊本県、和歌山県、青森県、宮城県、石川県、福井県、 富山県、岐阜県、京都府、三重県、山口県、徳島県、愛媛県、北海道 ほか
(2) 「必要に応じて」の留保付き
埼玉県:サウナ室には、必要に応じて非常用ブザー等を入浴者の見やすい位置に設けること。 新潟県:…室内を容易に見通すことができる窓を適当な位置に設け、必要に応じて非常用ブザー等を入浴者の利用しやすい場所に設けること。
埼玉県の条文では、同じ号の中で温度計だけが無条件の義務になっています (「入浴者の見やすい位置に温度計を設け」)。 書き分けは意図的なものと読めます。新潟県も、窓は無条件で、非常用ブザーだけが「必要に応じて」です。
「必要に応じて」を判断するのは所管の保健所です。設置しなくてよいという意味ではありません。
(3) 個室形態のみ
広島県:風俗営業法に係る個室以外の個室には、管理人に通じる非常用のベルを設けること。
共同のサウナ室には義務がかかりません。この記事では △ と判定しています。
条例に規定が無い自治体の扱い
× と判定した14都道府県についても、「設置しなくてよい」という意味ではありません。
厚生労働省の管理要領
公衆浴場における衛生等管理要領 Ⅱ 施設設備 第1 一般公衆浴場 10(1)7) サウナ室の室内を容易に見通すことができる窓を適当な位置に設けること。 また、入浴者の安全のため、室内には、非常用ブザー等を入浴者の見やすい場所に設けること。
これは技術的助言であり、条例のような強制力はありません。 それでも、行政指導の根拠としては全国で使われています。
神奈川県がその例です。 条例に規定が無い一方で、県が配布する「【公衆浴場】構造設備の基準」ではこの要領を引用し、 指導事項として明示しています。 条例だけを見て「神奈川県は不要」と判断すると、現場の指導とずれます。
業界の自主管理基準
日本サウナ・スパ協会「サウナ及びスパ営業施設における衛生確保に関する自主管理基準」(2019年9月)にも 同じ記述があり、点検表では次のように書かれています。
室内には非常用ブザー等を低い位置で入浴者の見やすい場所に設け、定期的に通電点検しているか。
「低い位置で」と「定期的に通電点検」は、どの条例にも書かれていません。 倒れた姿勢からでも押せること、押して鳴るかを確かめ続けること。 実務で効くのはこの2点です。
点検の具体的な手順は サウナ非常ボタンの点検手順|受信機の電源は入っていますか にまとめました。
もうひとつの分かれ目:公衆浴場業か、旅館業か
自治体の条例と並んで、義務の有無を左右するのが許可区分です。
厚生労働省の管理要領は、公衆浴場向けと旅館業向けで内容が違います。
公衆浴場における衛生等管理要領 | 旅館業における衛生等管理要領 | |
|---|---|---|
非常用ブザー | 「設けること」と明記 | 記述なし |
厚生労働省自身が、令和8年4月21日の通知でこう書いています。
非常用ブザーについては「旅館業における衛生等管理要領」に明記されていないが、 当該設備が緊急時の安全対策の一環として活用しうることを周知の上、必要に応じて指導すること。
自治体も、この差をそのまま運用しています。
京都市(個室サウナを有する施設に関する調査の実施結果、令和7年12月26日) 非常用ブザーの設置が義務付けられている公衆浴場許可施設の全施設で非常用ブザーが設置されていることと… 非常用ブザーの設置が義務付けられていない旅館業許可施設においては… 法令の義務ではないものの、非常用ブザーを設置することを求めた。
四日市市(サウナ施設における安全管理の徹底について) 旅館業法営業施設については当該基準がない。
ホテルや旅館に併設されたサウナは、公衆浴場法系の条例を根拠にできないことが多くなります。 2025年12月の事故も、旅館業の許可施設で起きています。
火災予防条例との関係
「消防の条例で決まっているのでは」と聞かれることがありますが、これは別の制度です。
- 火災予防条例は市町村の条例です(消防法第9条)。都道府県には存在しません (東京都のみ、特別区等の消防事務を都が受託している関係で都条例として存在)
- その東京都火災予防条例にもサウナ設備の規定はありますが、求めているのは 「温度が異常に上昇した場合に直ちにその熱源を遮断することができる手動及び自動の装置」= 過熱防止装置であって、人が助けを呼ぶ非常通報装置ではありません
- 神戸市や宇都宮市も同様に、簡易サウナ設備や一般サウナ設備について 熱源遮断装置や表示を求めていますが、非常通報手段は求めていません
屋外テントやバレルサウナに2026年3月31日から適用されている新基準については 屋外テント・バレルサウナの新防火基準 で解説しています。
自分の施設に適用される基準を調べる手順
- 許可区分を確認する。営業許可証を見て、公衆浴場業か旅館業かを確認します
- 所在地の管轄を確認する。政令指定都市や中核市なら市の条例、それ以外は県の条例です
- 例規集で「公衆浴場」を検索する。条例本体に無ければ、規則や細則も必ず確認してください (富山県、岐阜県、京都府、兵庫県は規則や細則の側にあります)
- 検索語は「非常用ブザー」から始める。見つからなければ「非常警報」「通報装置」「非常ベル」も試します
- 既存施設なら経過措置を確認する(三重県、群馬県、熊本県には遡及しない規定があります)
- 最後は所管の保健所に確認する。条例は改正されます
よくある質問
Q. うちの県は「×」でした。設置しなくてよいですか。
A. いいえ。厚生労働省の管理要領が全国共通の技術的助言として設置を求めており、 神奈川県のように条例に無くても指導事項としている自治体があります。 義務の有無と、施設としてのリスク管理も別の問題です。
Q. 「必要に応じて」とは、誰が判断するのですか。
A. 実務上は所管の保健所の判断になります。設置しないという判断をする前に、必ず相談してください。
Q. この一覧の最終確認日はいつですか。
A. 2026年9月1日です。条例は改正されます。日付が古くなっている場合、 最新の状況は各自治体の例規集でご確認ください。
Q. 中核市に施設があります。県と市のどちらですか。
A. 保健所を設置している市であれば、市の条例が適用されます。 中核市はすべて保健所設置市です。市の例規集をご確認ください。
Q. 条例に無い自治体で、それでも設置する意味はありますか。
A. 京都市が義務のない旅館業許可施設に対して「法令の義務ではないものの、 非常用ブザーを設置することを求めた」と公表しているとおり、行政は義務の有無にかかわらず 設置を求める方向で動いています。高温環境で人が倒れる可能性がある以上、 施設としてのリスク管理の問題でもあります。
この調査について(留保事項)
正確を期すため、確認しきれなかった点も記しておきます。
- 北海道の条番号は、道公式PDF(平成28年10月1日作成の審査基準)に基づいています。 以後の改正はレジオネラ対策のみと確認していますが、条ずれの可能性は残ります
- 千葉県の枝番「ホ」は、県公式PDFの新旧対照表の構成から特定した間接確認です (規定の存在自体は県公式ページで直接確認済み)
- 大分県は県例規集に到達できず、県公式「公衆浴場法営業許可申請の手引き」に 条番号付きで掲載された条文を根拠にしています
- 静岡県の公衆浴場法施行条例は、全文検索で「ブザー」が無いことを確認していますが、 第4条第10号の全号を並べた完全表示には到達していません
- 中核市(62市)は調査していません。 中核市も保健所設置市であり、独自の条例が適用されます。 該当地域の施設は、市の例規集をご確認ください
- 政令指定都市のうち仙台市、相模原市、静岡市は、例規集がログイン制のため 条例Webアーカイブや市公式PDFで条文を確認しています
この記事は法令の解釈や適用の可否を保証するものではありません。 最終的な判断は、所管の保健所や消防本部にご確認ください。
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最終更新: 2026-09-01(条例の最終確認日: 2026-09-01)
出典
国の通知と基準
- 厚生労働省「公衆浴場における衛生等管理要領等について」(別添2、別添3)
- 厚生労働省「旅館業及び公衆浴場業におけるサウナ施設への安全対策の徹底について」(令和8年4月21日 健生衛発0421第1号)
- 日本サウナ・スパ協会「サウナ及びスパ営業施設における衛生確保に関する自主管理基準」(2019年9月)
都道府県の条例(※調査で参照した例規集や公式PDF)
北海道 https://www.pref.hokkaido.lg.jp/fs/7/9/5/4/1/2/3/_/公衆浴場法.pdf / 青森県 https://reiki.pref.aomori.lg.jp/reiki_honbun/c001RG00000525.html / 岩手県 https://www1.g-reiki.net/pref.iwate/reiki_honbun/c101RG00000985.html / 宮城県 https://www.pref.miyagi.jp/documents/23322/kousyuyokuzyo_tebiki_2606.pdf / 秋田県 https://www1.g-reiki.net/pref_akita/reiki_honbun/u600RG00000325.html / 山形県 https://en3-jg.d1-law.com/yamagata-ken/d1w_reiki/H323901010067/H323901010067_j.html / 茨城県 https://www.pref.ibaraki.jp/somu/somu/hosei/cont/reiki_int/reiki_honbun/o400RG00000600.html / 栃木県 https://www.pref.tochigi.lg.jp/reiki/reiki_honbun/e101RG00000360.html / 群馬県、岐阜県、愛知県、三重県、広島県、香川県、沖縄県 https://ops-jg.d1-law.com/ / 埼玉県 https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/10026/kousyuyokujyo_jyorei.pdf / 千葉県 https://www.pref.chiba.lg.jp/kf-kaisou/kyoninka/yokuzyou.html / 東京都 https://www.reiki.metro.tokyo.lg.jp/reiki/reiki_honbun/g101RG00000879.html / 神奈川県 https://www.pref.kanagawa.jp/documents/87065/20220329kousyuyokujyo_zenbun.pdf ・ 構造設備の基準 / 新潟県 https://www1.g-reiki.net/pref.niigata/reiki_honbun/e401RG00000481.html / 富山県 https://www.pref.toyama.jp/documents/30051/yokujou_kisoku_080403.pdf / 石川県 https://www1.g-reiki.net/ishikawa/reiki_honbun/i101RG00000412.html / 福井県 https://www.pref.fukui.lg.jp/jyoureikisoku/testa/reiki_honbun/i201RG00000539.html / 山梨県 https://www.pref.yamanashi.jp/somu/shigaku/reiki/reiki_honbun/a500RG00000823.html / 長野県 https://www.pref.nagano.lg.jp/shokusei/seikatsu/documents/yokujou-jourei.pdf / 静岡県 https://www.pref.shizuoka.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/071/868/kijun.pdf / 滋賀県 https://www.pref.shiga.lg.jp/site/jourei/reiki_int/reiki_honbun/k001RG00000584.html / 京都府 https://www.pref.kyoto.jp/reiki/reiki_honbun/a300RG00001057.html / 大阪府 https://www.pref.osaka.lg.jp/houbun/reiki/reiki_honbun/k201RG00000543.html / 兵庫県 https://web.pref.hyogo.lg.jp/kf14/documents/01kaiseikisoku07.pdf / 奈良県 https://www.pref.nara.lg.jp/n071/63215.html / 和歌山県 https://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/010100/reiki/reiki_honbun/k501RG00000576.html / 鳥取県 https://www1.g-reiki.net/tottori/reiki_honbun/k500RG00000453.html / 島根県 https://www.pref.shimane.lg.jp/medical/yakuji/eisei/life_hygiene/kousyu_yokujo/index.data/jourei_zenbun_kouyoku.pdf / 岡山県 https://www.pref.okayama.jp/page/detail-17177.html / 山口県、宮城県、福島県、愛媛県 条例Webアーカイブデータベース(同志社大学) / 徳島県 https://reiki.pref.tokushima.lg.jp/reiki_honbun/o001RG00000455.html / 高知県 https://jorei.slis.doshisha.ac.jp/reiki/390003-87337967 / 福岡県 https://www.pref.fukuoka.lg.jp/uploaded/attachment/205519.pdf / 佐賀県 https://www1.g-reiki.net/pref.saga/reiki_honbun/q201RG00000514.html / 長崎県 https://www.pref.nagasaki.jp/uploads/2024/07/1720774633.pdf / 熊本県 https://www1.g-reiki.net/pref.kumamoto/reiki_honbun/q401RG00000675.html / 大分県 https://www.pref.oita.jp/uploaded/attachment/2265649.pdf / 宮崎県 https://www.pref.miyazaki.lg.jp/contents/org/fukushi/miyakonojo_hokensho/seikatueisei/03/y01.pdf / 鹿児島県 http://g-reiki.pref.kagoshima.jp/pref.kagoshima2/reiki_honbun/q701RG00000528.html
自治体の公表資料
- 京都市「個室サウナを有する施設に関する調査の実施結果」(令和7年12月26日)
- 四日市市「サウナ施設における安全管理の徹底について」
