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サウナの非常ボタンは義務?許可区分と条例で変わる設置基準

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サウナの非常ボタンは義務?許可区分と条例で変わる設置基準

「サウナ室の非常ボタンは、設置が義務なのか」

2025年12月に東京都港区の個室サウナで発生した火災事案を機に、 施設の運営者や、開業を検討している方から、この質問を受けることが増えました。

国の法律・政令・省令には、サウナ室への非常ボタンの設置を義務づける規定はありません。 一方で、施設が「公衆浴場業」の許可か「旅館業」の許可かによって、また所在する自治体の条例によって、 実質的に義務になる場合があります。

同じ「サウナ」でも、許可の区分が違えば求められる水準が変わります。 そしてこの構造は、あまり知られていません。 サウナ室を設計してつくる側として、根拠になる条文と通知を原典で確かめました。


法令や行政文書での呼び名

一般に「非常ボタン」と呼ばれる設備を、法令や行政文書は「非常用ブザー」と表記します。 国、都道府県、市の公式ページ13件を確認しましたが、 「非常ボタン」という語を使ったものは1件もありませんでした。

自治体によって、さらに呼称が分かれます。

表記

使っている主体

非常用ブザー

厚生労働省、大阪府、神奈川県、佐賀県、東京都、仙台市、千葉市、京都市、さいたま市

非常警報装置(非常用ブザー等)

北海道、札幌市、小樽市

ブザーその他の通報装置

四日市市

ブザーその他の非常用設備

静岡県

保健所や消防本部に問い合わせるとき、条例を検索するときは、 「非常ボタン」ではなく「非常用ブザー」で探してください。見つかり方がまったく変わります。

以下、見出しでは通りのよい「非常ボタン」を、 法令や通知、条例を引用したり解説したりする箇所では「非常用ブザー」を使います。


義務が生じるのはどの層か

義務の所在は、次の3層に分けて考えると正確に理解できます。

サウナ室の非常用ブザーの義務がどこで生じるか

第1層:国の法令

サウナに関わりそうな国の法令9本について、現行条文の全文を確認しました。

法令

「サウナ」の記載

非常用ブザーの設置義務

公衆浴場法

なし

なし

旅館業法

なし

なし

旅館業法施行令

なし

なし

旅館業法施行規則

なし

なし

消防法

なし

なし

消防法施行令

「蒸気浴場、熱気浴場」として用途区分にあり

なし

消防法施行規則

なし

なし

建築基準法

なし

なし

建築基準法施行令

なし

なし

確認は、e-Gov 法令検索で各法令の現行条文(附則・別表を含む)を取得し、 「サウナ」「蒸気浴」「熱気浴」「非常ボタン」「押しボタン」「非常用ブザー」「ブザー」「通報装置」 「非常警報」「非常ベル」「自動火災報知」「非常電話」「インターホン」で全文検索する方法によります。

その結果、「サウナ室に、利用者が操作して助けを求めるための装置を設置しなければならない」旨の規定は 1条も見つかりませんでした(2026年9月1日時点の現行条文)。

この確認は国の法律、政令、省令に限ったものです。 都道府県や保健所設置市、特別区の条例、市町村の火災予防条例は範囲に含みません。 義務はそちらにあります。

なぜ国の法令に書かれていないのか

公衆浴場法は、構造設備の基準を都道府県の条例に委ねています。

公衆浴場法 第3条 営業者は、公衆浴場について、換気、採光、照明、保温及び清潔その他入浴者の衛生及び風紀に必要な措置を講じなければならない。 2 前項の措置の基準については、都道府県が条例で、これを定める。

旅館業も同じ構造です。

旅館業法施行令 第1条第1項第8号 その他都道府県(保健所を設置する市又は特別区にあつては、市又は特別区…)が条例で定める構造設備の基準に適合すること。

国は「基準は自治体が決めなさい」と設計しています。 非常用ブザーが要るかどうかは、施設の所在地によって変わります。 これが「調べても義務なのかどうかはっきりしない」と感じる理由です。

第2層:厚生労働省の通知

国の法令には無い一方で、厚生労働省の通知には明記があります。

公衆浴場における衛生等管理要領 Ⅱ 施設設備 第1 一般公衆浴場 10(1)7) サウナ室又はサウナ設備(蒸気又は熱気のもの)を設ける場合  サウナ室の室内を容易に見通すことができる窓を適当な位置に設けること。  また、入浴者の安全のため、室内には、非常用ブザー等を入浴者の見やすい場所に設けること。

公衆浴場における衛生等管理要領等について 平成12年12月15日 生衛発第1,811号/直近改正 令和8年1月20日 健生発0120第48号)

「設けること」と明確に書かれています。 ただしこの通知は「技術的助言」(地方自治法第245条の4)であり、それ自体が営業者を直接拘束するものではありません。 拘束力は、この要領を踏まえて各自治体が定めた条例を通じて生じます。


公衆浴場業か、旅館業か

厚生労働省の同じ通知の下には、公衆浴場向けと旅館業向けの2つの管理要領がぶら下がっています。 そして、旅館業の要領には非常用ブザーの記述がありません。

公衆浴場における衛生等管理要領

旅館業における衛生等管理要領

サウナ室を見通せる窓

「設けること」

「設けること」

非常用ブザー

「設けること」と明記

記述なし

客室〜フロント間の連絡設備

「必要に応じて備え付けることが望ましい」

これは推測ではありません。厚生労働省自身が通知の中で明言しています。

旅館業及び公衆浴場業におけるサウナ施設への安全対策の徹底について (令和8年4月21日 健生衛発0421第1号) 非常用ブザーについては「旅館業における衛生等管理要領」に明記されていないが、 当該設備が緊急時の安全対策の一環として活用しうることを周知の上、必要に応じて指導すること。

京都市の個室サウナ調査

京都市が2025年12月に実施した個室サウナの調査結果に、この差がそのまま出ています。

個室サウナを有する施設に関する調査の実施結果(京都市・令和7年12月26日) 非常用ブザーの設置が義務付けられている公衆浴場許可施設の全施設で非常用ブザーが設置されていることと、 その動作確認が正常に行われていることを確認した。

非常用ブザーの設置が義務付けられていない旅館業許可施設においては、7施設で非常用ブザーが設置されており… また、非常用ブザーが設置されていない6施設のうち、低温サウナ(ミストサウナ)施設1施設を除いた5施設については、 法令の義務ではないものの、非常用ブザーを設置することを求めた

「義務付けられている公衆浴場許可施設」と「義務付けられていない旅館業許可施設」。 同じ市内の、同じサウナで、許可区分によって義務の有無が分かれています。 行政文書がそう書いています。

事故が起きた施設の許可区分

厚生労働省の通知の冒頭には、事故の状況がこう記されています。

令和7年12月15日に東京都港区で発生した、旅館業の営業許可施設内に設置された個室サウナにおける 火災事案により、サウナ室内で利用者が死亡したことを受け…

旅館業の許可施設です。非常用ブザーの設置が要領に明記されていない側で起きています。

全国調査の数字も、この構造と一致しています。

旅館業

公衆浴場業

サウナ施設のある施設数

5,240

7,812

非常用ブザーが設置されている施設数

3,327

6,702

設置率

63.5%

85.8%

未設置率

36.5%

14.2%

(厚生労働省 健生衛発0421第1号 別添「サウナ施設の状況確認結果」/令和8年4月20日時点。 157自治体中4自治体が未回答のため全数調査ではありません)

未設置率に22.3ポイントの差があります。 制度上「明記されているか、いないか」の差が、そのまま現場の設置率に出ています。

報道等で見かける「サウナ施設の2割超が非常ボタン未設置」という表現について この数字は旅館業と公衆浴場業を合算した場合の未設置率(23.2%)にあたります。 ただし厚生労働省の通知本文にこの表現はなく、別添の施設数から計算すると得られる値です。 母数の13,052は「サウナ施設が設置されている旅館業と公衆浴場業の施設数」であり、 両業態の全施設数ではありません。上の業態別の数字で見たほうが実態に近いといえます。


消防法令が定めている設備

「消防法で決まっているのでは」という質問もよく受けます。 消防法令にサウナに関係する規定はありますが、非常ボタンとは目的が違います。

規定

何のための設備か

非常ボタンとの違い

消防法施行令 別表第一(九)項イ<br>「公衆浴場のうち、蒸気浴場、熱気浴場その他これらに類するもの」

サウナの防火対象物としての用途区分。消防用設備等の設置義務の起点

用途の分類であって、通報装置の規定ではない

自動火災報知設備

火災を自動で検知して警報を発する

火災の検知。人が助けを呼ぶ手段ではない

非常警報設備(非常ベル等)

建物の在館者に火災を知らせる放送・ベル

建物全体への火災報知。サウナ室個別の義務ではなく、目的も火災に限定される

火災通報装置<br>「一の押しボタンの操作等により消防機関に通報することができる装置」

119番へ自動通報する装置。設置場所は防災センター等

押しボタンではあるが、スタッフが操作するもの。サウナ室内の利用者用ではない

サウナ室で人が倒れた、扉が開かない。 こうした場面は「火災」ではありません。 消防法令の枠組みだけでは、この場面はカバーされません。

屋外サウナの新しい防火基準

2026年3月31日から、屋外のテント型やバレル型のサウナに新しい防火基準が適用されています。 「サウナの新しい規制」として一緒に語られることがありますが、非常ボタンとは無関係です。

  • 対象は屋外に設けるテント型やバレル型(円筒形かつ木製)で、定格出力6kW以下、薪または電気のもの
  • 屋内の個室サウナは対象外
  • 求められるのは「温度が異常に上昇した場合に熱源を遮断する装置」、つまり過熱防止装置であって、 人が助けを呼ぶ非常ボタンではありません

内容は屋外テント・バレルサウナの新防火基準|令和8年3月31日施行 で詳しく解説しています。屋外サウナを設置している方、検討している方は、こちらをご確認ください。


自治体の条例はどうなっているか

では実際に、どの自治体がどう定めているのか。 47都道府県すべての条例を、本文を取得して確認しました。結果は次のとおりです。

判定

件数

内容

○ 明記あり

22

条例(または規則・細則)に非常用ブザー等の設置が規定されている

△ 間接

11

「室内を見通せる窓」「入浴者の安全に注意すること」等にとどまる

× 規定なし

14

条例本文を確認したが、該当する規定が無い

○ と判定した22都道府県は、北海道、青森県、宮城県、群馬県、埼玉県、千葉県、新潟県、富山県、石川県、 福井県、岐阜県、静岡県※、愛知県、三重県、滋賀県、京都府、和歌山県、岡山県、山口県、徳島県、愛媛県、 熊本県です(※静岡県は旅館業法施行条例のみ。公衆浴場法系だけなら21都道府県)。

条文はたとえばこう書かれています。

群馬県(群馬県公衆浴場法施行条例 第3条第1号ワ(3))  サウナ室には、温度計、時計及び非常用ブザーを備えること。

千葉県(公衆浴場法施行条例 第4条第1項第17号ホ)  脱衣室又は洗い場からサウナ室の室内を容易に見通すことのできる窓を適当な位置に設け、  かつ、サウナ室の室内に非常用ブザー等を備えること。

北海道(公衆浴場法施行条例 第8条第11号)  サウナ室及びサウナ設備には温度調節装置を備え、サウナ室には非常警報装置を備えること。

「○」の読み方で見落とされやすい点

(1) 「○」でも義務の強さが違う

同じ「規定あり」でも、条文の書きぶりで拘束力が変わります。

強度

書きぶり

無条件の義務

「備えること」

群馬県・千葉県・愛知県・滋賀県・岡山県・熊本県・和歌山県 ほか

「必要に応じて」の留保付き

「必要に応じて…設けること」

埼玉県・新潟県

個室形態のみ

個室にのみ義務

広島県(共同のサウナ室には義務なし)

埼玉県の条文は「サウナ室には、必要に応じて非常用ブザー等を入浴者の見やすい位置に設けること」です。 同じ条文の中で温度計は無条件義務なので、書き分けは意図的なものと読めます。

(2) 「条例」だけを見ると取りこぼす

サウナの基準が条例本体ではなく、規則や細則の側に置かれている自治体があります。

  • 富山県:富山県公衆浴場法施行規則 第2条第1項第17号エ
  • 岐阜県:岐阜県公衆浴場法施行細則 第6条第12号リ(条例本体にはサウナ規定自体が無い)
  • 京都府:公衆浴場法施行細則 別表第1。しかも「公衆浴場法施行条例」という名前の条例には サウナの規定が1件も無く、実体は別条例と細則という三段構えになっています
  • 静岡県:公衆浴場法施行条例には無く、旅館業法施行条例の側にあります

「条例を検索したが見つからない=規定なし」と判断すると誤ります。

(3) 既存施設には遡及しない自治体がある

三重県(平成8年4月1日前の既存施設)、群馬県(平成12年4月1日時点の既存施設)、 熊本県(平成16年10月1日以後に新築・改築工事に着手するもの)には経過措置があります。 施設の建築年次によって、適用されるかどうかが変わります。

規定が無い都道府県での扱い

× と判定した14都道府県についても、「設置不要」という意味ではありません。

厚生労働省の「公衆浴場における衛生等管理要領」は全国共通の技術的助言として非常用ブザーを求めています。 実際、神奈川県は条例に規定が無い一方で、県が配布する「【公衆浴場】構造設備の基準」でこの要領を引用し、 指導事項として明示しています。

日本サウナ・スパ協会の「サウナ及びスパ営業施設における衛生確保に関する自主管理基準」(2019年9月)にも 同じ記述があり、こちらは点検表で「非常用ブザー等を低い位置で入浴者の見やすい場所に設け、 定期的に通電点検しているか」という運用要件まで求めています。 「低い位置に」「定期的に通電点検」という具体性は条例にはありません。

保健所を設置する市の条例

保健所を設置する市(政令指定都市や中核市など)は、県の条例ではなく独自の条例が適用されます。

政令指定都市20市も確認しました。○ 13市/△ 3市/× 4市です。

たとえば静岡県の公衆浴場法施行条例には非常用ブザーの規定がありませんが、 静岡市の条例には「ブザーその他の非常用設備を設けること」という規定があります(県より厳しい)。

大阪市はもう少し込み入っていて、府の条例にも市の条例にも規定が無い一方、 「大阪市公衆浴場指導要綱」で非常用ブザーの設置を求めています。 条例だけを検索すると「不要」と読めてしまいます。

「○○県は義務」と読んだだけで判断せず、施設の所在地がどの自治体の管轄かを確認してください。

事故が起きた東京都の条例

2025年12月の死亡事故は、東京都港区の個室サウナで発生しています。

調査の結果、東京都の条例にも、特別区(23区)が各区で定めている条例にも、 サウナ室の非常通報装置の設置義務はありませんでした。 東京都全域の例規を横断検索しても、浴場関係条例における「非常用ブザー」は0件です。

旅館業の許可(要領に記述が無い側)で、条例上の義務も無い自治体。 二重に規制の外にある条件で起きた事故でした。

港区は事故後、「条例改正も含め必要な対策を進めてまいります」と公表しています。

なお、川崎市は令和7年7月1日施行の改正で、サウナ室の非常用ブザーの規定を新設しました。 条例は動いています。

自治体別の一覧(条例名・条番号・原文・判定の根拠)は サウナ非常ボタンの義務は自治体で違う|許可区分×条例まとめ にまとめています。

呼称は自治体ごとに違う

条例の検索でつまずく最大の原因がこれです。装置の呼び方が統一されていません。

呼称

使っている自治体

非常用ブザー/非常用ブザー等

最多(青森・宮城・群馬・埼玉・千葉・新潟・岐阜・愛知・滋賀・京都・岡山・山口・徳島・愛媛・熊本 ほか)

非常用ブザーその他の通報装置

富山・石川・福井・三重

非常警報装置

北海道

非常用のブザー

和歌山

非常用のベル

広島(個室のみ)

ブザーその他の非常用設備

静岡(旅館業法施行条例)

非常用警報器

京都市

1つの語だけで検索すると、取りこぼします。

自分の施設に適用される基準を確認する手順

条例は改正されます。この記事を含め、ウェブ上の情報だけで最終判断をしないでください。

  1. 自分の施設の許可区分を確認する(公衆浴場業か、旅館業か)。営業許可証に記載があります
  2. 所在地を所管する保健所に問い合わせる。 聞くべきことは「当該許可区分で、サウナ室の非常用ブザーの設置が条例上求められるか」
  3. 所在地の消防本部に問い合わせる。火災予防条例の側の要否を確認します
  4. 屋外にテント型やバレル型のサウナを置く場合は、令和8年3月31日施行の火災予防条例改正の適用を確認する

問い合わせの際は「非常ボタン」ではなく「非常用ブザー」という語を使ってください。


設置基準:どこに、どうつけるか

法令上の一律の設置基準は無いため、ここから先はサウナ室を製造している立場からの実務になります。

どこに付けるか

厚生労働省の要領は「入浴者の見やすい場所に設けること」と書いています。 現場で考えるのは、もう一段先です。

  • 座った姿勢から手が届くか。ベンチに座った状態で、立ち上がらずに押せる高さにあるか
  • 倒れた姿勢から手が届くか。急な体調不良で床に倒れたとき、そこから押せる位置にもあるか
  • 上段と下段のどちらからも届くか。2段ベンチの場合、上段の利用者が下段まで降りずに押せるか
  • 扉の近くに寄せすぎていないか。扉付近は人の出入りで誤作動が起きやすい位置です
  • 背もたれや手すりに紛れていないか。設置直後は目立っても、後から備品が増えて隠れることがあります

複数箇所への設置も検討に値します。設置数に法令上の決まりはありません。

高温と高湿度に耐える機器か

サウナ室は80〜100℃、高湿度という、電子部品にとって過酷な環境です。 一般的な室内向けの押しボタンをそのまま持ち込むことはできません。

  • 使用温度範囲が室内の最高温度を上回っているか(余裕を見て確認します)
  • 防湿性と防滴性があるか。特に蒸気を使うサウナでは必須です
  • 樹脂部品の耐熱。ボタンカバーやラベルが熱で変形したり剥がれたりしないか
  • 電池式の場合は電池の耐熱。高温下では消耗が早まります

配線の納まり

見落とされやすいのが配線です。

  • 一般的な電線の被覆は、サウナ室の温度に長期間さらされると劣化します。 耐熱電線の使用と、壁内での適切な処理が必要です
  • 壁の断熱層を貫通する部分の処理。ここを雑にすると、熱橋になったり、断熱欠損の原因になったりします
  • 無線式は配線の問題を回避できますが、電波の到達と電池管理という別の課題が生じます

サウナ室の壁は、内装材、防湿層、断熱材、下地という層構造になっています。 後から穴を開けると、断熱と防湿の性能を落とすことがあります。 新設の場合は、サウナ室の設計段階で非常用ブザーの位置と配線経路を決めておくことをおすすめします。

【実機写真をここに差し込む:サウナ室内の設置位置/耐熱配線の納まり/受信機】 ※ 現在未撮影


押されたことに気づけるか

非常用ブザーは、押されたことを知らせる受信機とセットで初めて機能します。

押されたことに気づける仕組みになっているか

設備として点検されるのは①だけです。②〜④は運用の話であり、点検の対象から抜け落ちます。

事故を受けて各自治体が出した注意喚起は、そろって動作確認を挙げています。

大阪府:「非常用ブザーの定期的な点検」「受電盤の電源が入っているか、ブザーが正常に鳴るか等」 北海道:「非常警報装置(非常用ブザー等)は電源が入っていて正常に作動するか、利用者の見やすい場所にあるか」 佐賀県:「非常用ブザー等が正常に作動するか確認すること」

「設置されているか」ではなく「電源が入っていて、鳴るか」を確認するよう促しています。

さいたま市が2025年12月〜2026年1月に実施した緊急安全点検では、 「非常用ブザーが設置されていない 3施設」という指摘実数が公表されています。 東京都の個室サウナ42施設の調査でも、非常用ブザー等の設置は17施設にとどまりました。

月次で5分の点検を回すだけで、この状態は防げます。 具体的な手順は サウナ非常ボタンの点検手順|受信機の電源は入っていますか にまとめました。印刷して現場に貼れるチェックリストも用意しています。

夜間や無人の時間帯をどうするか

点検を続けていくと、最後に残るのが「鳴っても人がいない時間帯」です。 ワンオペの時間帯、清掃中、深夜帯。受信機の音量を上げるだけでは解決しません。

考え方は サウナの「もしも」を防ぐ非常ボタンの重要性。IoTで実現する次世代のサウナ管理 で整理しています。


誰も点検していない、という制度の穴

自動火災報知設備などの消防用設備等は、消防法により半年ごとの機器点検と年1回の総合点検、 消防署への報告が義務づけられています。

一方、サウナ室に単独で設置された非常用ブザーは消防用設備等に該当しません。 法定の点検義務が誰にもないということです。 消防設備業者の定期点検にも入らず、保健所の立入検査でも 「設置されているか」は見られても、押して鳴るかまでは毎回確認されません。 制度上、点検する人がいない設備であり、施設が自分で回すしかありません。


扉、窓、ボタン、駆けつけの優先順位

サウナ室の安全は、非常ボタン単独では成り立ちません。 サウナ室を作る立場から言えば、優先順位は次のとおりです。

扉、窓、非常用ブザー、駆けつけ体制の順序

非常ボタンは3番目です。①と②が満たされていれば、そもそも押す必要がありません。

厚生労働省の全国調査にも、この順序が数字で出ています。

項目

旅館業

公衆浴場業

扉が内側から押すだけで開くなど、緊急時の開閉に支障が生じない構造

94.7%

95.9%

緊急時の従業員との連絡・駆けつけ体制が確保されている

81.3%

93.0%

非常用ブザーが設置されている

63.5%

85.8%

扉は9割以上が対応済みで、非常用ブザーだけが大きく低い数字です。 逆にいえば、扉が9割超で担保されているからこそ、 残る1割弱と、ブザーの未設置が重なったときにリスクが顕在化します。

扉について確認すること

  • 内側から押すだけで開くか(ラッチのない構造か)
  • 取っ手やドアノブが外れないか。取り付け部の緩み、熱による樹脂や木部の劣化がないか
  • 内側から施錠できる構造になっていないか (東京都の条例は個室について「扉には鍵を付けないこと」と定めています)
  • 利用者が倒れた場合に、その身体が扉を塞がない開き勝手か
  • 扉付近に開閉を妨げる物が置かれていないか

窓について確認すること

  • 脱衣室または洗い場から室内を容易に見通せるか
  • 窓が曇りや汚れ、掲示物で塞がれていないか
  • 見通せる範囲に死角がないか(ベンチの下、扉の陰)

窓の設置は、非常用ブザーの規定が無い自治体でも求められていることが多い項目です。 本記事の調査でも、△判定の11都道府県の多くは「室内を見通せる窓」の規定を持っていました。


駆けつけ体制について確認すること

厚生労働省の調査で旅館業の 18.7%、公衆浴場業の 7.0% が「確保されていない」とされた項目です。 非常用ブザーに次いで低い数字になっています。

  • 鳴ってから何秒以内に、誰がサウナ室に向かうかが決まっているか
  • 夜間、早朝、清掃時間帯に、受信機のそばに人がいるか
  • サウナ室までの動線と鍵の場所が受信機のそばに掲示されているか
  • 新人スタッフが手順を説明できるか

個室サウナ特有の設計上の論点は 個室サウナの安全設計|扉、ノブ、換気、監視 で扱っています。


種類と選び方、後付けの費用

非常用ブザーには有線式と無線式があり、既存のサウナ室にも後付けできます。


よくある質問

Q. 結局、うちの施設は設置が義務なのですか。

A. 許可区分と所在地の自治体によって変わります。公衆浴場業の許可であれば、 厚生労働省の「公衆浴場における衛生等管理要領」に「非常用ブザー等を設けること」と示されており、 これを取り込んだ条例により義務となっている自治体があります。旅館業の許可の場合、 要領に該当記述がなく、義務とされていない自治体があります。 所管の保健所に、許可区分を伝えたうえでご確認ください。

Q. 義務でなければ、設置しなくてよいのでしょうか。

A. 義務の有無と、設置すべきかどうかは別の問題だと考えています。 京都市は義務のない旅館業許可施設に対して「法令の義務ではないものの、非常用ブザーを設置することを求めた」と 公表しています。行政は義務の有無にかかわらず設置を求める方向で動いており、 また高温環境で人が倒れる可能性がある以上、施設としてのリスク管理の問題でもあります。

Q. 消防法で義務化されたと聞きましたが。

A. サウナ室内の非常用ブザーを義務づける消防法令の規定は確認できていません。 2026年3月31日から適用されている新しい基準は、屋外のテント型やバレル型のサウナを対象とした 防火の基準であり、その柱は過熱防止装置です。人が助けを呼ぶ非常ボタンとは別のものです。

Q. 「厚労省と消防庁の連名通知」が出たと聞きました。

A. 令和8年4月21日の通知(健生衛発0421第1号)は、厚生労働省健康・生活衛生局生活衛生課長の単独名義です。 末尾に「本通知については消防庁と協議済みであること申し添えます」と記載があり、 消防庁と協議のうえ発出されたものですが、連名通知ではありません。

Q. 設置する数に決まりはありますか。

A. 個数を定めた規定は確認できていません。「入浴者の見やすい場所に」という要領の記述が基準になります。 ベンチの配置、段数、室の広さによっては、複数箇所への設置を検討してください。

Q. インターホンでも代わりになりますか。

A. 東京都は調査結果の中で「非常用ブザーに代わる設備(インターホン等)」という区分を用いており、 代替設備として扱われる例があります。ただし自治体の条例が「非常用ブザー」と特定している場合は それに従う必要があります。所管の保健所にご確認ください。

Q. 条例はどこで調べられますか。

A. 各自治体の例規集で「公衆浴場」「旅館業」「非常用ブザー」を検索してください。 主要な自治体については 許可区分×条例まとめ で条文を確認して一覧にしています。


サウナ室をつくる側からできること

ONE SAUNA は国産のバレルサウナを設計から製造まで手がけています。

非常用ブザーは、後から壁に穴を開けて付けるより、 サウナ室の設計段階で位置と配線経路を決めておくほうが、断熱と防湿の性能を損ないません。 新設をご検討中であれば、企画の段階からご相談ください。

既存のサウナ室についても、外観、内部、ヒーターの設置状況を スマートフォンの写真から AI が判定する愛サ点検アプリを無料でご利用いただけます。

ご相談はお問い合わせからお寄せください。


最終更新: 2026-09-01

参考にした一次情報

法令(e-Gov 法令検索・現行条文)

通知・行政資料

自治体の公表資料

本記事の法令・通知に関する記述は、2026年9月1日時点で上記の原典を確認して作成しています。 条例は改正されます。最終的な判断は、所管の保健所・消防本部にご確認ください。

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